統一地方選のさなかに飛び出した、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ下関北九州道路での「忖度(そんたく)」発言が、地元の選挙戦にも余波を広げている。自民参院議員の塚田一郎副国土交通相(新潟選挙区、麻生派)の発言を巡り、自民候補の陣営からは悪影響への懸念が聞こえる一方、野党陣営は「敵失」に乗じ批判を強めている。
「あんなことを言わなくてもいいのに」。福岡県北部で県議選を戦う自民候補の陣営関係者は気をもんだ。
地元自治体や経済界が求める下関北九州道路は、財政難から2008年に計画が凍結されたが、19年度予算で国は再び調査費を計上。自民関係者が困惑するのは、事業推進がアピール材料だったが、一転して疑惑の的になったからだ。県内の麻生氏の勢力圏で県議選を戦う保守系候補は「自分の選挙に必死の中、世間から『政治家はみんな利益誘導する』とみられかねない」と迷惑がった。
野党側は攻撃材料を得て争点化を図る。対岸の山口県下関市で議席を争う県議選の野党系候補の陣営幹部は「安倍さんは問題発言した人を処分しないから図に乗っているようにしか思えない。こういう政治は変えなくてはいけない」と批判。立憲民主福岡県連も「政治の私物化」と指摘し、3日の統一選候補の合同個人演説会で取り上げて問題視するなど攻勢を強めている。
影響は、保守分裂選挙の福岡県知事選にも及んでいる。
自民推薦で新人の武内和久氏(47)の陣営関係者は「選挙に関係ない。我々は有権者と毎日触れあうだけだ」と打ち消しに必死だ。小川洋氏(69)は現職として下関北九州道路推進の立場。国直轄の調査移行を実績として訴えてきただけに、陣営関係者は「下関北九州道路の問題を政争の具にするなど許されない。我々は正々堂々と政策として(必要な道路だと)訴えていく」と話した。
一方で、共産推薦の新人、篠田清氏(70)は「(武内氏と小川氏の)2人とも下関北九州道路の推進を表明している。忖度政治のもとで、大型開発に熱中するような県政でいいのか」と保守系の両候補を矛先に批判を強めている。【西嶋正法、下原知広、近藤綾加】
「本当の話、許されない」
塚田氏は発言を撤回し謝罪したが辞任要求は拒否している。政権の「緩み」との指摘もある今回の問題を有権者はどう受け止めているのか。
福岡市中央区の公園で花見をしていた同市の無職の男性(67)は「(塚田氏は)本当の話をしたのだと思う。政治家として許されないし、責任は取るべきだ」としつつ「自民党を支持するのは変わらないし、それは知事選でも同じ。自民党はもっとしっかりしてほしい」と注文をつけた。
同市の会社員の男性(47)は「発言を撤回するのは当たり前。安倍首相は早めに辞任させた方が良いのではないか」と語った。
「(事実ではなかったという)言い訳は苦し紛れにしか聞こえない。公共事業を正当な理由なく進めてはいけない」と問題視するのは同市の会社員の男性(24)。「このままでは自民がやりたいようにやってしまう」と統一選の投票先は自民党を避けるつもりで「野党がもっと頑張ってほしい」と漏らした。【佐野格】
塚田副国交相の「忖度」発言
大家(敏志)さんが、私が逆らえない吉田博美参議院の幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。地元の要望がある。これが下関北九州道路です。実はこれ、11年前に凍結されているんです。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理ですよ。安倍総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路の事業が止まっとるわけです。大家敏志が来てですね、「副大臣、これ何とかしてもらいたい」。吉田幹事長が私の顔をみて「塚田分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します。分かりましたと。総理とか副総理がそんなこと言えません。そんなこと実際ないんですよ。森友とかいろいろ言われてますけど。でも私は忖度します。今回の新年度予算に国で直轄の調査計画に引き上げました。できるだけ早く、皆さまのもとに下関から橋が通ってこられるように頑張りたいと思います。=1日の北九州市内の集会で。一部を抜粋
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190404/k00/00m/010/486000c
2019-04-04 13:03:00Z
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